前回の記事で予告したこともあり、2016年(平成28年)11月18日の午後から「嵐山の奥」へ紅葉狩りに。
金曜日であれば人の出も限られているかと思いきや、さすがに京都を代表する一大観光地だけあって混雑していました。
私が訪れた当初は一面の青空が広がっていましたが、夕方には低い空に薄い雲が伸びてしまい、週末には天気が崩れるだろうと予感させます。
天気予報を見て、この日を選んで訪れた方が多かったのかもしれません。
天龍寺さんから渡月橋を渡り、桂川(大堰川)の上流へ逃れようと焦るものの、なかなか人混みから抜けられません。
これなら嵐山の奥ではなく嵯峨の奥か、あるいは高雄を選べばよかったとも思いましたが、いずれにせよ紅葉の名所は似たようなものでしょう。
モンキーパークいわた山(岩田山)の下まで来ると、ようやく混雑も緩和されましたが、先ほどまでの賑わいに当てられたのか、どうもよろめいてしまいします。
大悲閣千光寺さんへ向かって保津川沿いの散策路を上っているうちに、なぜだか川の中に引き込まれそうな危うい感覚に陥ってしまい、これは良い兆候ではありません。
病み上がりということもあり、無理は禁物と早めに切り上げることにしました。
けっきょく、短時間しか滞在せず、写真も数枚撮影したのみです。

保津川の紅葉。旧舟曳路の取付。星のや京都さん・大悲閣千光寺さんの下。対岸は小倉山。
大悲閣千光寺さんの下、星のや京都さんの船着場の奥から、いわゆる「旧舟曳路」(船曳道)に取り付き、滑りやすい崖上の道を少しばかり歩きました。
その先の川べりから小倉山の山肌を彩る紅葉を撮影しています。
川を行く屋形船(遊覧船)や保津川下りの船だけではなく、小倉山の山腹にはトロッコ列車(嵯峨野観光鉄道)も往来します。
車窓から紅葉を見物するため、今の季節のトロッコ列車はこのあたりで一旦停止しますので、それを知っていれば対岸からの遠望も容易ですが、木々の合い間に車両の姿が覗くのみです。
上の写真は保津川右岸の西京区側から対岸の右京区側を向いて撮影しています。
住所(冠称地名)のうえでは保津川の右岸が京都市西京区嵐山にあたり、左岸が京都市右京区嵯峨にあたりますが、観光地としては右京区側も広義の「嵐山」と呼ばれやすく、嵐電(京福電鉄)の嵐山駅も右京区側に所在します。
上の写真で左手前に僅かに見えている岩場が、ハイカーやトレッカーにはお馴染みの旧舟曳路です。
嵐山まで保津川を下った船を、現在はトラックで亀岡へと運搬していますが、1948年(昭和23年)までは川沿いに綱で船を引いて人力で亀岡へと戻していました。
その際に利用された川べりの道のりを、ハイカーの間では俗に「ふねひきみち」などと呼びますが、「船曳道」「舟曳道」「船曳路」「舟曳路」など、どうもその漢字表記が一定しません。
保津川下りの関係者さんは「曳き舟道」や「綱道」と呼んでいらっしゃるようです。
昔の『山と高原地図 京都西山』の地図では「旧舟曳路(一般ハイカー不可)」としており、手元にある1986年(昭和61年)版に付属のハンドブックには「古路 舟曳路」「綱路とも保津の竿差しは呼んでいる」とあります。
星のや京都さん(かつての嵐峡館さんの跡地)の船着場の脇を通していただき、その奥から旧舟曳路に取り付きますが、それを示す標や案内のようなものはありません。
断崖の川べりを伝うように道が付いていますが、大雨などの影響もあり、年々、荒れていく印象を受けます(流れの速い保津川に備え無しで滑落したら助からないでしょう)。
険しく足場が良くない岩の上に咲く小さな小さなヒメツルソバのお花を見付け、心が癒されますが、体調が今ひとつということもあり、適当なところで引き返しました。
今度は嵐山渡月橋方面へ向かって保津川を下ります。

保津川(大堰川)の紅葉と渡し船、遊覧船を船着場から撮影。
右岸は嵐山、左岸は小倉山・亀山公園。
旅館より南東の船着場(旧舟曳路の取付とは別の船着場)から保津川の下流を向いて撮影しています。
このあたりも景観スポットですが、さすがに嵯峨嵐山の中心的なエリアと比較すれば人も少なく。
山肌や水面に映る紅葉は美しいものの、すでに太陽が傾いており、谷間には日が差さず、上の写真では空も白んで見えます。
水面すれすれに多くの水鳥さん飛んでいますが、お分かりでしょうか。
写真で右に見えるのが「山としての嵐山」(嵐山城跡の山)で、左に見えるのが「亀山」。
その山間を流れる保津川が嵐山の峡谷部を形成しています。
小倉山と亀山の境目は曖昧で、同じ山体の内にあり、わざわざ区別する必要性を感じませんが、しいて申し上げるのであれば、亀山公園の最奥から先(北)が小倉山と見なせるでしょう。
逆に、北を亀山、南を小倉山とする古い絵図もあり、このあたりは混同が見られます。
現在、小倉山と扱われる山が亀の甲羅のような山容であり、藤原定家の山荘跡とされる地の直接的な裏山が本来の小倉山だと考えると、絵図の並びが正しいようにも思われます。
対岸にあたる亀山公園(嵐山公園 亀山地区)の展望台から、逆に、今回、私が歩いたコースを眺望できます。
積雪時に大悲閣や旧舟曳路の一部を撮影した写真を上の記事に掲載しています。
時系列が後先しますが、下の2枚は復路ではなく往路で撮影した写真です。
そのため、まだ小倉山に日が差しています。

大堰川の紅葉。対岸は小倉山・亀山公園(嵐山公園 亀山地区)の登山口。
右奥に愛宕山の山頂も覗いてます。
中央の平らな丘陵が小倉山と亀山公園の山。亀の甲羅のような平たい形をしていますね。
嵐山公園でも奥といえる亀山地区あたりまで多くの観光客さんが詰め寄せているのが見て取れました。
「京都・嵐山花灯路」で嵐山の山裾がライトアップされると、対岸の河川敷や小倉山から綺麗に見えます。
今年の嵐山花灯路は2016年(平成28年)12月9日から18日までの予定です。

中ノ島公園(嵐山公園 中ノ島地区)の紅葉。渡月橋の右岸(南)。
霞んでいますが、右下に比叡山の山影も写ってます。
リハビリがてらの軽い散歩でしたが、山手で鮮やかに色付く紅葉は楽しめました。
久々に「山としての嵐山」も登りたいものです。
追記。
京都府警によると、2020年(令和2年)11月17日の夜、京都市右京区嵯峨亀ノ尾町の河川敷にツキノワグマが出没したとのこと。
嵯峨亀ノ尾町の河川敷は、渡月橋の上流、亀山公園(嵐山公園 亀山地区)の山麓域にあたり、本記事に掲載している3枚目の写真に写る近辺です。
以前より愛宕山の山中でも熊の目撃例が相次いでいましたが、いよいよ保津川(大堰川・桂川)まで下りてきたようですね。
追記終わり。
旧船曳路の取付点(地理院 標準地図)
「旧舟曳路(の取付点)」
京都府京都市西京区(保津川の対岸は右京区)
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